■日刊政経 冬新年号
「青森からの風」

 (2008.1 掲載)

■日刊政経 夏季特集号
「時がくれば――」

 (2007.8 掲載)
■日刊政経 春号 「背骨体験」
 (2007.4 掲載)
■日刊政経夏特集号
「脳外科医と地方の医療」

 (2006.8 掲載)
■日刊政経夏季特集号
「日暮橋とグラスビール」

 (2005.8 掲載)
日刊政経新年号
  イカとスルメの評判

 (2005.1 掲載)
日刊政経夏号価値観と比較
 (2004.8 掲載)
日刊政経新年号さらば時代
 (2004.1 掲載)
■開院にあたり思う「陣屋通り」
 (2003.8 掲載)

陣屋通り


たそがれ時の陣屋通りがどんななりあいであったかは、今知る術がない、
そういう通り名であったと聞いたのもつい最近のことである。
でもそこに、夢をつなぎ新しい標を築こうとしている自分がいる。借景の
中に浮かび上がる建物はあれよあれよという間に、ようやくその風体を世間
に曝し始めた。外見より中身といえど、外見がその印象を決めることが多い
だから外見を少しでも安らぐようにと考えたがどんなものであろうか。
かといって、金もない、後ろ盾もない、跡継ぎもいない、顔も良くない自
分が ビルの谷間のチョコレートハウスで何をしようとしているのか。
長年棲み慣れた施設を飛び出すのは、ある意昧で冒険である。函館赤十字
病院にて15余り。さしずめ江戸時代なら、家督を譲って毎日孫と戯れ、釣
り三昧の気ままな日々という年頃なのに。

「何を血迷ったんだい」
「いい年になって、今が一番安定しているではないか」
と、ある後輩の伊佐は、こうもいった。
「それはそれでわれわれに夢を与えてくれることでおおいに歓迎だよ」
「この不景気だからこそ、独立する輩は多いんだし」
「居酒屋だって美容院だってどんどん店舗が増えているというご時世だぜ」
「おいおい俺のやろうとしていることは、居酒屋さんかい」
「居酒屋さんに失礼だよ」
伊佐は、10年振りの函館競馬を堪能して帰っていった。
「先生こけたら俺がきてやるよ」と言い残し。

米国においては、画像診断センターの隆盛が聞かれる。つまり各病院での
検査機器の導入に伴う経済的リスクの回避をねらい、さらにより集約した形
で病院との連携、互いの機能の分担がはかられるという。本邦においても都
市部でそのような動きが一部あることは事実である。
ホームドクターが検査を依頼する場合には、大病院での高度検査機器に集
中する傾向がある。結果的に検査待ちの時間が増え、複数の台数を稼働させ
なくてはならない。診断と治療の両翼は医療者にとって必須のことではあっ
ても、時間的負担も大きく画像的診断のプロはプロであるという面もある。
一方では、各病院での外来診療の比率が高まるに連れて、入院病棟と手術
室をいったりきたり、救急患者もみてと、いわゆるすべての一貫した治療と
いうのが行われている。
果たしてそれが理想的とは思われない.。一人の主治医が最初から最後ま
でというのは安心にはつながる。しかし、治療上の専門性を高めるために
も、大病院での分診療を滅らすためにもサテライト的に外来部門は独立し
た方がよい。
小さな個人オフィスがあって、どうしたら最善の治療が選択できるのかと
相談に乗るのがずっと夢であった。入院治療が必要であれば、しかるべき処
に紹介して、自分も関われたらと考えた次第である。

ある看護師の小梅はこういった。
「陣屋通りって、戦いの時と関係あったのでしょ」
「これから戦争ですね」
「何を物騒なことをいうんだい」
でもそうかも知れない、診断センターと個人オフィスと外来部門なのだから。
新しい形態で、陣屋通りを変えたいが。この夏に独立。

テイク ツー
ある先輩の病院の理念として、二つの目標があるという。一つは「患者様
が安心してかかれる、安心して預けられる病院をめざす」ということが掲げ
られている。すなわち信頼していただけるだけのプロ集団に徹して、質の高
い技術とサービスを提供するということである。他の一つは「職員が気持ち
よく仕事のできる職場づくりをめざす」としている。このことはチームワー
クを大事にして、風とおしをよくすることで意識の共通化をはかることに
他ならない。成功しているからよく聞こえるということでなくて、顧客とス
タッフの双方に目を向けているということが大事であろうと思う。高杉 良
の「ザ.エクセレント・カンパニー」という本の中でも、確かにスーパーバ
イザーの重要性が強調されていた。プランニングとリアルワールドという二
つの課程を考えた場合にも、興昧深い事実、二つの落とし穴がある。一つは
プランニング自体が間違っていて、現実に結実しない場合である。プランニ
ングが実に実験室的であり、リアルワールドに即しなかったということであ
る。マーケティングがよくなかったために、うまくいかなかったという現実
もよくあることではあるが。もう一つは、プランニングはよかったけれど
も、リアルワールドでのデザイン不良で成功しなかった場合である。いって
みれば単純なことであるが、何故か実験室での研究と臨床応用の過程に似て
いて面白い。実験的には大成功でも人間と臨床場面では没となる成果が巷に
ごろごろしているのである。

外と内のテイクツーが大事なのかと思った次第であるが。
ある看護師のお玉がこういった。
「先生、いくら考えても同じですよ。しょせん人間相手ですから」
「そんなこというなよ。人は標語とか、目標とか理念とかに弱いんだから」
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